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尾州

 

地元が誇る産業を、地元の店が伝えたい——私たちUnlimited-lounge-1LDK annexは、そんな思いでsssteinYOKEと共に特別なプロジェクトを企画しました。

 

愛知県と岐阜県の尾州産地は、世界三大毛織物の産地として知られています。尾州産地とは一宮市を中心に、名古屋市、稲沢市、津島市、江南市と岐阜県羽島市で、日本の約8割の毛織物を生産しています。木曽川の豊かな水に恵まれた環境と高い技術を生かしたモノづくりで、日本のファッション産業の発展に貢献してきました。

中でも創業100年以上の葛利毛織工業は、世界的な有名ブランドにも多くの毛織物を提供し続けている老舗です。現在でも昭和7年に導入したションヘル織機を使い、まるで手織りのような風合いのテキスタイルを提供し続けています。

 

世界的にも誇れる尾州の素晴らしさは、ファッション業界のプロの間では知られているものの、一般的な認知度はまだ高くありません。Unlimited-lounge-1LDKannexは、海外ブランドにも多大な影響を与えた地元のモノづくりを多くの人に知ってもらうため、特別なプロジェクトを企画しました。

 

両店で取り扱うsssteinYOKEと共に、葛利毛織工業のフランネル生地を使ったコートとジャケット、ブルゾン、シャツ、パンツという5型の特別なアイテムを共同制作しました。葛利毛織工業に販売スペースを設け、1123日にはsssteinの浅川喜一朗デザイナーとYOKEの寺田典夫デザイナーを迎えて、地元産業の魅力溢れる仕事をみなさまにお伝えします。

 

今回のプロジェクトに至った背景を、Unlimited-lounge-の鵜飼健貴と1LDK annexの西脇洋太、三浦茜が、2人のデザイナーと語り合いました。

 

 

取り組みについて■

 

 

鵜飼健貴(以下、鵜飼):僕の地元である一宮市や自分たちが住んでいるエリアは、世界的に有名な毛織物の産地なんです。洋服に携わる身として、地元産業の素晴らしさをお客さまにも知ってほしいという思いで、今回のプロジェクトの構想がスタートしました。

 西脇洋太(以下、西脇):食事会の際に鵜飼さんと話したのが、1LDK annexも参加するきっかけでした。鵜飼さんとは付き合いも長いから、好きなことややりたいことも大体分かるんです。店の垣根を越えた取り組みはこれまでなかったのですが、鵜飼さんとなら一緒にできると即決し、企画は進んでいきましたよね。

鵜飼:僕はテキスタイルがもともと大好きなんです。服を見る上でもとても重要視していて、生地を見て、触って、高揚感があるかどうかを重要視しています。だから産地を問わず、いいテキスタイルを作る人たちへのリスペクトはありました。工場見学にも足を運ぶうちに、地元の素敵な生地を使ったプロジェクトをやりたい気持ちはさらに強くなっていったんです。ただ、自分にとってもブランドにとっても未知数の企画でした。Unlimited-lounge-単独では限界があるし諦めかけていたところに、1LDK annex2人も参加してくれて実現しました。 

三浦茜(以下、三浦):私が参加したのは、両店で唯一の女性スタッフとして意識してきたことが生かせると思ったから。いつもメンズやウィメンズ関係なく、私の視点でのユニセックス提案を心掛けています。ショップやブランドの垣根を超えるのと同じように、性別も超える取り組みになればいいなとご一緒させてもらうことになりました。

西脇:参加メンバーが決まり、何を作ろうかと考え始めたときに葛利毛織工業の名前が挙がりました。3人で見学に行き、このフランネルの生地を使いたいと満場一致で決まったんです。1LDK annexとしては、ダークチャコールのカラーリングでスタイルを提案したかったのでぴったりでした。

鵜飼:生地は葛利毛織工業では定番のカシミヤタッチのフランネルで、雰囲気と質感が素晴らしいんです。世の中のテキスタイルは、カシミヤより高級なウールがあったり、シルクより高級なコットンがあったりと複雑です。だから、実物を見て感じるパワーを何よりも大事にしました。葛利に個人的に初めて行ったときから覚えていた生地でもあったんです。

西脇:生地が決まり、次はデザイナーです。1LDK annexとしては、これまで何度も別注を作ってもらったYOKEにお願いしたかった。寺田さんなら、自分たちが本当に着たいと思えるものを届けてくれるという確信がありました。 

寺田典夫(以下、寺田):1LDK annexにはすでに確固たる世界観があります。YOKEのバイイングも、他の店にはない視点がある。西脇さんと三浦さんのやりたいことはすでに決まっているので、僕はそこに合わせて作るだけでした。一番面白かったのは、「商品を機屋で売りたい」と言われたこと。グッときましたね。お客さまに現地まで足を運んでもらい、地元を盛り上げたいという強い思いを感じたんです。自分自身の刺激にもなりました。

鵜飼:Unlimited.-lounge-からは、sssteinの浅川さんに早々に依頼しました。浅川さんの生地の使い方からシルエットの出し方、服への向き合い方まで全てに置いて信頼感があったので。それに、2ブランドが混ざり合うプロジェクトは、僕たちも純粋に見てみたかった。同じ生地を使っているので、例えばYOKEのジャケットにsssteinのパンツを合わせるとセットアップになります。ssstein YOKEが好きな人たちは潜在的な感覚が似ているから、ファンも面白がってくれるのではないでしょうか。

浅川喜一朗(以下、浅川):鵜飼さんは本当に生地が好きなんです。バイヤーの方々の服の見方はそれぞれ個性があり、鵜飼さんはアイテム一点一点をすごく丁寧に見てくれる。僕自身もプロダクトやアートワークを掘り下げて服を作るので、その深い部分までお客さまに丁寧に届けてくれる人なんです。僕に似てシャイで、いつもは先陣を切って「何かやりましょうよ」というタイプではありません。その鵜飼さんから「やりたい」という相談を受けたときにその強い気持ちがぐっと胸に入ってきて、うれしかったんです。内容も普通の別注とは違い、地元の生産背景をお客さまに届けたいという試みで、とても意味のあるプロジェクトだと感じました。 

寺田:こんな面白いことを考えられる機会はこれまでなかったですよね。尾州産地=ウールという何となくのイメージはある程度浸透しているかもしれないけれど、地元の人たちが発信すると説得力が違いますから。

鵜飼:3人で工場見学に行った際、それぞれのお店で販売するよりもここで売りたくなったんです。葛利毛織工業は決してアクセスのいい場所ではありません。一宮市駅から、30分に1本しか走っていない尾西線に乗り継ぎ、玉ノ井駅に来てもらわないといけない。それでもお客さまに工場まで足を運んでいただき、ガチャンガチャンという工場の音を聞きながら、実際に現場を見てもらうことにこのプロジェクトの意義があると信じています。

西脇:1123日には葛利の方が工場の説明から生地ができるまでを、実際に機械を稼働させながら説明してくれます。その場に浅川さんと寺田さんも来てくれるので、生地と服のそれぞれの作り手の思いを伝えられる場にしたかったんです。

 

 

商品について■

三浦:工場で販売する別注アイテムは、1LDK annexからはYOKEのジャケットとブルゾン、Unlimited.-lounge-からはsssteinのコート、シャツ、パンツです。私はジャケットが個人的にずっと好きで、テーラードジャケットを1LDK annexらしく提案したかったんです。ブルゾンなどのカジュアルなスタイルが定着しつつあったので、少し変化を出すためにジャケットスタイルを打ち出しました。別注では生地に加えて、私のサイズ感にバランスを変えてもらっています。女性のお客さまや小柄な男性にも着てほしいので。 

寺田:パターンを三浦さんサイズに作り直しましたよね。

三浦:はい、絶好の機会でしたから(笑)。

寺田:もう一着は、元々レザーをカットオフして作っていたカーコートに、葛利のフランネル素材を使いました。テキスタイルにハリ感がないと作れない構造なので、ウール生地をぜいたくにボンディングして、きれいなプロポーションにこだわっています。硬くならないように芯地の柔らかさを何度も調整し、しなやかな着心地と表面の光沢が気に入っています。手間はかかりましたが、それがYOKEらしさでもあるので満足しています。フランネルのハリ感が絶妙で、アウターにもパンツにも使えて本当にいいテキスタイルだなと作ってみて感じました。  

浅川:鵜飼さんが言ったように、葛利のフランネル生地には迫力があるんですよ。原料もいいし、ゆっくり丁寧に織られている分、弾力と膨らみがある。スキッパーはボタンがないシンプルなデザインなので、生地の魅力がピュアに伝わるはずです。テキスタイルがきれいな分、パンツは逆にラフな雰囲気にもスタイリングできるように、ウエスト周りにあえてゆとりをもたせて抜け感も出せる構造にしました。

鵜飼:スキッパーとパンツに加えて、寺田さんが「浅川君がこの生地で作るコートも見てみたいな」と言っていたらしいので、であればコートもとお願いしたんです(笑)。

そうなればお店としても、思い入れのあるモデルでリクエストさせて頂きました。

浅川:コートは普通に作るとシルエットがやや落ちてしまいます。肩や袖、胸周りに接着芯を入れてシルエットを保ちながら、弾力感のある生地の特性を生かした、動きのあるデザインを意識しました。 

 

それぞれの思いについて■

鵜飼:デザイナー2人に、地元の、自分たちが選んだ生地で服を考えてもらえるのがうれしかったですね。僕もファッション業界に入るまでは、自分の住む場所が世界三大毛織物の産地だということは知らなかった。今回のプロジェクトを通じて、お店で手に取る商品の背景や、すでに自分が身にまとっている服の価値を考えるきっかけになればいいなと願っています。

西脇:そうですね。1LDK annexはオープンから13年間、幅広い年齢層のお客さまと日常の変化を共にしてきました。その大切な人たちのライフスタイルに新しい視点を提供し、さらに豊かになればという思いで続けています。今回のショップやブランドの垣根を越えた取り組みで、また一つの発見につながるのを楽しみにしています。

三浦:私もずっと現場に立っているからこそ、物の本質や価値をもっと伝えたいという思いがありました。最近はSNSの浸透によって、物を選ぶ基準が良くも悪くも多様化しています。だからこそ、誰がどのような思いで作っているかなど、生産背景やストーリーを届けたい。この取り組みをきっかけに、表面的なことだけではない価値を伝えたいですね。

寺田:三浦さんが言うように、スマートフォンの画面上ではなかなか伝わらない価値が服にはあります。その一つが、日本人が作る生地です。正直、そこまでやるか?といういい 意味での変態気質があるんです。他国の生地と比べても、明らかに品質がいい。その技術や執念が、メード・イン・ジャパンの価値を支えているんでしょうね。世界的にも貴重なモノづくりを継承していくために、ブランドと地元のショップがタッグを組んで発信する試みはこれまでなかったので、何かを感じてもらえるいい機会なのではないでしょうか。

浅川:パリで展示会を続けていて思うのは、尾州産地はもちろん、メード・イン・ジャパンは僕たちが思っている以上に海外からの信頼が今も高いこと。例えデザインがプレーンでも、上質な生地や丁寧な縫製など、日本のモノづくりがメード・イン・ジャパンとし てブランド化しているのだと、逆に海外のバイヤーやスタイリストから教わりました。だから僕たちブランドにできることは、その価値を今後も作り続けることです。イタリアの革職人や調香師の話を聞くと、仕事への誇りが伝わってきます。街も、彼らの仕事の価値を理解しているから、産業を継承していく環境が整っているんです。今回のプロジェクトが、尾州産地の価値が広がる一つのきっかけになればいいですね。

Supported by Mizuma wataru (ENKEL)

 

 

今週末10月27日(日)にLOOKを公開します。お楽しみに!

 

 

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愛知県名古屋市東区泉1-12-33
052-211-9546

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皆様のご来店を心よりお待ちしております。

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October 22, 2024, 7:00 PM

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