次のシーズンに向けて
こんにちは。
1LDK AOYAMA HOTELの河上です。
個人的に最近淡々と商品紹介をしすぎているように感じるので、
これからは定期的に今後入ってくるもの/仕込んでいる最中の物の紹介やお店の物とはあまり関係の無さそうなBlogを書こうと思います。
今日は次のシーズンに仕込んでいるアイテムの紹介を少しだけ。
1LDK AOYAMA HOTELでは数シーズン前からイタリアのシューズブランド:F.LLI Giacomettiの取り扱いをしています。
前の職場で知ったイタリア:ヴェネト地方のシューズファクトリー。
誰もが聞いたことがある様なメゾンブランドの足元を支える確固たる技術と経験を持つファクトリーですが、僕がF.LLI Giacomettiというブランドに対して興味深いと感じる点は、そこだけではありません。
F.LLI Giacometti。
それは世界中の伝統的かつクラシカルなシューズに対する敬意、そして高いサンプリング能力とイタリアの確固たる技術・経験の融合により生まれる実用性/ファッション性/独自性溢れるシューズブランド。
靴、特にドレスシューズはいくつか履き比べる事により、それぞれの良さを深く知る事が出来る物。
例えば、僕がALDENを買うきっかけになったのは、
洋服屋を始めて、「これ最高に格好いいなぁ。」と思って買ったイギリス靴に足をボロボロにされた経験から、
「かっけぇ靴は痛ぇ。」というイメージを持ってしまった僕の耳に飛び込んできた、
「ALDENはすごい。格好良くて一日中履いても全く疲れない革靴だ。」という非常に興味をそそる言葉でした。
時間をかけて何足か買ったり譲ってもらって履いてみたのですが、
ヴァンラストのコードヴァンペニーローファーに甲骨を攻撃されて、
アバディーンラストのタッセルローファーとシングルモンクにタコだらけと外反母趾にされて、
バリーラストのロングウィングに更にそのタコを痛めつけられた結果。
ようやく最後に買ったモディファイドラストのプレーントゥにより、その「一日中履いても全く疲れない履き心地」を体験する事が出来ました。
因みにそこまでたどり着くのに3年くらいかかりました。
めげずに挑戦し続ける事が出来た原動力は、当時の職場の先輩からの「自分の足に靴を合わせるんじゃない。履きたい靴に自分の足を合わせるんだ。」という今考えると意味のわからない強力な洗脳と、単純に革靴の魅力に対する好奇心から。
確かにモディファイドラストの履き心地は良かったですが、僕はあのラストが生み出す独特のフォルムに最大の魅力を感じます。
土踏まずのシェイプからボリュームあるトゥ部分に流れるラインは最高に美しいです。
ただ、とりあえず磨けばなんとかなるコードヴァンに履き慣れてしまった僕にとって、ALDENの革質にムラのある繊細なカーフは非常に扱いづらかった記憶があります。
ヴァンラストのペニーローファーのアメリカンな軽快さ。
これは幾度となく海水に浸された過去を持つ、代々前職の先輩から受け継がれ、最終的に僕の元に辿り着いた革質がボロボロになったコードヴァン。
磨けばビカビカに光ったので、前知識で持っていた「コードヴァンは水に弱い。」というイメージを払拭させてくれたシューズでもあります。
ただやはり塩分により死んでしまった革だったので履いているうちにモカから裂けて以来、靴磨きの練習に使っていました。
あと、この革靴を経て靴は中古で手に入れる物では無いと学びました。
アバディーンラストのコードヴァンタッセルローファーの万能性と、出るとこは出てて絞るとこは絞ったあの特有のフォルムは他のブランドのタッセルローファーに無い魅力があります。
何より一番最初に自分で買ったALDENだったので、個人的には思い入れのあるモデルでもあります。
ただ、アバディーンラストがローファー木型では無い為か僕の足の形が悪かったせいかフィッティングが正確でも履き口が笑ってしまうところは気になりました。
バリーラストのバーガンディのコードヴァンロングウィングの戦車の様な男心くすぐる存在感。
当時の先輩には駄目出しされたコーディネートでしたが、極太のパンツから覗く艶やかなメダリオンのバランスが僕は好きでした。
ただ、工場でのソールの接着が甘かったせいか履いている内にソールが徐々にズレてきました。
あと犬の糞を踏んでからショックで一年くらい放置しました。
そしてアバディーンラストのダークブラウンスウェードのシングルモンクは「お前はコンサバさのカケラも理解しようとする姿勢も感じられないから。」という理由でオーダーした(させられた)モデル。
苦手だったジャケパン/スーツスタイルまでこなし、「本当にこの靴好きになれるのかな。。。」という不安も長い時間をかけて先輩への感謝の気持ちに変えてくれたシューズでもあります。
僕が持っているモデルはALDENの中でも非常に少ない型数ではありますが、それでも各モデル・木型によって全く異なる魅力を持つのを、それぞれを履き比べる事で感じる事が出来ました。
アンラインド(ライニングがつかないもの)は見た目からふにゃふにゃしていたのが何故か気に食わず手を伸ばさなかったですし、シングルモンクとモディファイドラストプレーントゥ以外はコードヴァンだった為、違う革質の物を履いてみたらまた違った印象を覚えていたのかもしれません。
靴は別にその木型が自分の足に合おうが合わなかろうがフィッティングさえ問題なければ単純に「格好いいし、この靴にしか出来ないコーディネートがある。」という理由で履けてしまう物だと感じます。
ただ、ALDENを買い足しつつも結果的に一番履く機会が多かったのはバリーラストのロングウィングのグッドイヤーのソールのコバのボリュームが気に入らなくて買い足したHeinrich DinkelackerのRioのフルブローグと、他のブランドには無いずっしりとしたボリュームがあり、ネイビーのコードヴァンがとても美しかったローファー:Weinでした。
この2つのモデルは僕の甲高で幅広の足の形にとてもフィットした上に、一足ずつ職人が手作業で作る重厚感ある雰囲気も含め、見た目が非常に格好が良かった。
別にどっちが上で〜と言った話ではなく、例えば見た目が同じくらいの完成度であれば、より履いていて、洋服と合わせていて、ストレスの無いものを自然に選んでしまうのは当たり前です。
結果的に当時の僕にとっての良い靴とは、履いていて全くストレスのなかったHeinrich Dinkelackerの2足だったのでしょう。
因みに同じ木型のRioでも3アイレットのプレーントゥは全く履かなくなりました。
アイレットの数でフィッティングが全く違い、履いていて落ち着かなかったからです。
靴選びは本当に難しいと感じます。
「良い革靴」の定義は本当に人それぞれです。
・コストパフォーマンスが良い
・ブランドネームが良い(PR力が強い)
・革が良い
・履き心地が良い
・使用用途にあった
・軽い
・かっけえ
・流行ってる
・雨の日でも履ける
・適切な手入れさえすれば長く履ける
・誰とも被らない自分的最強のやつ
・今だから感じる、その背景が面白いもの
・今はもう手に入らないもの
・自分の足にしっかりと合うもの
等、一つ一つ上げていくと無限に広がる要望と目的を叶え続けてきたシューズメーカー。
それぞれがそれぞれの用途に向けて多岐にわたるモデルをリリースしてきました。
John Lobb/Anthony・George Cleverly/Edward Green/Church’s/Crockett&Jones/Tricker’s/Enzo Bonafe/Santoni/Le Yucca’s/TANINO CRISCI/Silvano Mazza/
J.M WESTON/Corthay/Aubercy/Paraboot/Vass/Heinrich Dinkelacker/Ludwig Reiter/ALDEN/Florsheim/Allen Edmonds/大塚製靴/三陽山長/HARUTA等。
貴族階級に向けたもの・経験と知識を受け継ぐ伝統的なもの・歴史の長いもの・今は無きもの・ライセンスが生き残ったもの・名門から出て新たに生まれたもの・大衆的人気を勝ち取ったもの・その地域に根付いたもの。
僕の非常に心許ない経済力と偏見的な物の見方では一生全てを履き比べる事は出来ないと思いますが、果たして全てを履ききった時に見える靴選びの真理とはどんな物なのでしょうか。
と、想像してみても結局は人それぞれの足の形や好みに依存するもの。
小耳に挟んだだけの他人の言葉や、実際に履いた事も無いのに良さを勧めてくる店員の助言、調べると溢れ出てくるネットの情報は必要無く、まさに自分の足を使って経験し、足りない部分を埋める為に選び出したものこそが「本当に良い革靴」なんだと思います。
F.LLI Giacometti for 1LDK
“GOAT LEATHER DERBY SHOE”
F.LLI Giacometti。
シューズファクトリーの得意分野/地域に依存する特性/今までこなしてきた仕事内容を細かく理解し、自らの思い描くシューズに的確に落とし込んで生まれたコレクションは、数多くの革靴を自身の足を使って探し出してきたからこそ出来る仕事です。
ローファーにはローファー木型を。サンダルにはサンダル木型を。
シューズにはシューズ木型を。ブーツにはブーツ木型を。
当たり前の様に思えて、実は多くのシューズメーカーが行なう事が出来ていない誠実な靴作り。
見た目だけではなく、実際に履く人の履き心地を踏まえてその靴の理想的な見え方を考え貫き通す芯の強さ。
そして、自らが想像する独創的なシューズに適した木型をアプローチする、知識に裏付けられた柔軟性。
多種多様な革を用い、それを選ぶ人間の感性を試す様な攻撃性。
何よりも、世界中の伝統的かつクラシカルなシューズに対する敬意と、それをベースに新たな物を作り出す感性。
その高いサンプリング能力とイタリアのファクトリーの持つ確固たる技術と経験の融合により生まれる、オリジナリティ溢れる実用性/高いファッション性。
1LDK AOYAMA HOTELの2018AWシーズンラインナップの一つとして、F.LLI Giacomettiに特別なシューズを作って頂きました。
「日本の都市生活者に向けたドレスシューズ。」
この一足が手持ちのシューズに足りないと感じている穴を埋めてくれるはず。
実際の発売は7月下旬から8月上旬頃になります。
サンプルはこの週末にはお店に用意できるかと思いますので、気になる方は是非お声かけ下さい。
○ お問い合わせ先
1LDK AOYAMA HOTEL
東京都港区南青山6-8-18
03-5778-3552
皆様のご来店を、心よりお待ちしております。
1LDK AOYAMA HOTEL STAFF 河上